美少女官能小説■site:TAMARL
五百円玉
待ち人が来なくて煙草を吹かしまくっていた。
駅前のロータリーは、まだ夕方だったけど、人影がまばらだった。
初老の男がハーモニカを吹いていた。
いつもの若者のストリートライブすら出ていない寒い日だった。
誰も観客がいない…。
いや、一人だけいた。6、7歳の女の子。
黄色い帽子、私立小学校らしい制服。
自分の身体と同じ大きさの黒いランドセルを両手で握っている。
小さく細い足でしっかり立ったまま、ハーモニカの演奏を聞いていた。
他の通行人は目にもくれない。
さして上手ではない演奏の初老の男。子供らしく身体でリズムを取るでもなく直立不動で聞き入っている小学生の女の子。
僕は煙草を吸うのを、忘れた。
演奏が終わった。
女の子は財布から硬貨を取り出すと、空き缶に入れた。
男が軽く頭を下げた。
女の子がぴょこんとお辞儀をした。
そのまま女の子は歩き去っていった。
どこか堂々とした歩き方。一度も振り返らなかった。
結局、待ちぼうけを食らわされて、家路についた。
初老の男の前を通り過ぎるときに、空き缶にちょっと目をやった。
五百円玉が一枚だけ入っていた。
Oct 29 2000