美少女官能小説■site:TAMARL
めがね
朝というよりは午後に近い通勤電車の車内。
乗客もまばら。
それにしても美しい女性(ひと)だった。
斜め前に座っている。
たぶん二十歳前後。
後ろで簡単にまとめた髪。きちんと膝をそろえたストッキング。黒のパンプス。重そうな大きめのバッグを膝の上に載せている。
紺のリクルートスーツ。
今はもう、11月。
黒く細いふちの眼鏡をかけて、まっすぐ前を向いている。
電車に乗っているとき、ほとんどの人は目をつぶって寝ているか、本やマンガかメールを読んでいる。いまだに携帯で話す馬鹿もいるが。
この女性(ひと)はただひたすら前を向いていた。視線は、どこかを、どこでもないどこかをしっかり見据えていた。
眼鏡越しに見える瞳には、ちょっとだけ疲労の色が浮かんでいる。けど、なんだか一生懸命なふうに見開かれている。
ところで僕も眼鏡だ。
駅。住宅が立ち並ぶ、住宅しか無い土地の駅。
そろそろくたびれた電車のブレーキ音が、しずかな車内に響く。
ドアが開く。
冷たい風が入ってくる。
彼女が立ち上がる。
ちょっと、よろけた。
僕は、なぜか曇ってしまった自分の眼鏡を、ひたすら拭っていた。
Nov 29 2000